「兄者よ……本当にやるのか?」
張飛が私の身を案じて声をかけてくる。
私はそれに対してただ一言、
「
うむ」
とだけ返した。瞳には強い意志を滾らせて。
「キャンッ! ナァ~? キャウンキャウンキャン!」
先日の戦で猫になってしまった関羽も心配げだ。
しかし、私の意志は揺るぎなかった。
皿に積まれたにんにくを一つ手に取り、その様に恐れおののく周囲の兵――眷属達に、声高に告げる!
「
今こそ我、にんにくさんに挑み、天に昇らん!」
「いや昇天しちゃ駄目でしょう」
いつもツッコミの厳しい諸葛亮が半眼で言うものの、なんのその、それでも私の決意は揺るがない!
「いざ――尋常に!」
告げるとともに、あんぐりと口を開けて、にんにくを皮も向かず丸々頬張る。
周囲の兵から「おおぉ!」とどよめきが上がった!
「流石はオレ達の大将だぁー!」
「劉備様! 劉備様! 劉備様!」
「汝こそ真の三国無双よぉ!」
「まどか★マギカ十一話まだかなぁ」
「あ、
曹操じゃん、ちぃーっす」
「うぃーっす」
私のあまりの偉業に、兵達は感涙さえしているようだ!
私は頬袋を膨らませてもっきゅもっきゅとにんにくを頬張り、右拳を天に向かってぐっと掲げて雄叫びを上げた!
「
むごぉーーーーーーーーーーーー!」
『
うぉおーーーーーーー! りゅ・う・び! りゅ・う・び! りゅ・う・び!』
これぞ王者。
これぞ英雄。
これぞ真祖。
そして。
これぞ、
崩壊現象。
「(あ、やっべ、なんか
左手から灰になってきてる!)」
私は焦った! 心底焦っていた!脂汗をだらだら垂らしていた!
しかし!
『
りゅ・う・び! りゅ・う・び! りゅ・う・び!』
「
む……むごぉーーーーーーーーーーーーーーー!」
『
うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
兵達の士気を下げるわけにはいかない!
例え私の死期が早まろうとも!
私はそんなことを考えながら、
既に下半身がほぼ灰になりつつあるのを感じていた。
そして部屋の片隅で曹操が「うぷぷ」と微笑んでいるのも、感じていた。
おのれ……
おのれ曹操ぉおおおおおおおおおお!
* 次回 第九十七話 劉備の灰でお城を作ろう! に続く
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