冷凍食品半額セールに間に合わなかった。
死にたい。
……む。死にたいと書いたら先輩に羽交い絞めにされたので、仕方ないから自粛して書こうと思う。
とはいえ、最近の日常なんて死にたいことのオンパレードだから、これを書いていたらまあ間違いなくまた言ってしまうわけで。仕方ないので、入院中のことでも書こうと思う。
霊能力に目覚めて間もない頃、吉村加奈子という患者と知り合った。まあ、コイツ、可愛くないのなんのって。僕が出会った女性の中で最も……性格の可愛さが先輩と同じくらいなかったね。
その上、なんかコイツ、どういうわけか僕に悪意たらたらで、しょっちゅうシャレにならないちょっかいをかけてきた。窓から一緒に景色を眺めて欲しいと言われてひょこひょこ横に行ったらそのまま下に落とされそうになったり、リンゴを剥いてあげると言われたのでしばらく剥かせていると、ジーッとナイフを見つめ始めて、「……や、これは流石に駄目よね。事故で処理できない」と呟いていたり。まあ、ことあるごとに僕を殺そうとするヤツだった。
まったく、命の大切さをなんだと思っているんだろうね。……なんだよ。なんでそんな目で見るんだよ、ユウ。
こほん。
で、まあ、普通だったら、吉村加奈子のちょっかいかけてくる理由が「好きな子をいじめたくなる」なんていう可愛らしい動機だったりで、ほんわか終焉できるのだろうけど。これが、そうは問屋が卸さなかった。
ある晩、流石に笑い事じゃ済まされない状態になった。彼女が、眠っている僕に大量の睡眠薬を飲ませようとしてきたのだ。なんとか難を逃れ、どうしてそんなに僕を殺したいのか訊ねると、どうやら彼女、「自分の手で人の命を終わらせてみたい」らしい。自殺を繰り返すのも、僕を殺そうとするのも、そういうことだという。
……まいったね。殺人嗜好者だよ。まったく……人の命をなんだと……。…………。……だから、なんで「貴方が言う権利無い」とか「似た者同士じゃない」みたいな視線で見るんだよ、鈴音。
こほん。
そうはいっても、僕だって苦しい死に方はいやだ。吉村加奈子に殺されてやるわけにもいかない。ただ、だからと言ってこのままこの殺人嗜好者を世に放り出すのも気が引ける。
そんなわけで、それから、僕と吉村加奈子は「命の尊さを学ぼう同盟」を結成、お互いの嗜好を改善しようと二人で色々やってみるわけだが……。
ま、結果は今の僕を見れば言わずもがなだな。
ただ、彼女の方には少し変化があった。それは……。
とと、そろそろ夕飯の買出しにいかないと。
じゃ、また、暇が出来たらいずれ。