*マテゴ三巻のプチ裏ネタです
時は昭和56年。名家である「朝霧家」に養子として引き取られた孤児、さと子、14歳。
彼女は虐待を繰り返す院長の支配する孤児院から引き取ってくれた朝霧家の主人(64歳)に心の底から感謝の念を抱き、主人が優しく、娘として接してくれるのにも関わらず、自らメイドとして屋敷で働き始めた。
主人はさと子を大層可愛がり、さと子もまた、その想いに応えて笑顔を取り戻す、幸せな生活。
しかし、そこに徐々に忍び寄る悲劇の影。
さと子と主人の関係を気に食わなかった、朝霧家に関わる他の親族達一同。主人の奥方、美咲、その娘、長女由香里、次女直美、長男尚継。他にもメイド長である栗子や、尚継の嫁、弘子にまで、陰湿ないじめを受け始めるさと子。
しかし、さと子をたった一人かばい続ける青年が居た。そう……次男の春人(15歳)である。彼は、義理とはいえ自分の妹であるさと子に対し、深い愛情を見せる、主人譲りの優しい気性を受け継いだ、とても実直な青年だった。
次第に春人に惹かれ始めるさと子。しかし、義理とは言え、自分は妹であり、今はメイドの身。そんな恋心が許されるはずもない。
さと子はその恋心を、ひっそりと、その小さな胸にしまいこむのであった……。
一方、春人もまた、妹への想いに苦しんでいた。最初は単純に妹として愛情を向けていたつもりだった。しかし、心が近付くにつれ、春人はさと子に胸の高鳴りを覚えるようになっていたのだ。
自分を兄と慕ってくれる相手にそんな目線を向けるとは、なんといやらしい……。実直な春人はそんな考えに苛まれ、自分で自分を責めていたのだ。
さと子と距離をとり始める春人。しかし、春人の想いなど知らないさと子は、自分が嫌われてしまったのだと察し、また、さと子からも距離をそっととり始める……。
そんな折、長男、尚継の下卑た悪意がさと子に向けられ始めていた――。
そして、主人は主人でまた、秘密を隠しているのだった。なんと、さと子をそもそも捨てたのは、主人だったのだ! つまり……さと子と春人は実の兄妹だったのだ!
そんなことを露とも知らない二人は、それぞれ、胸の中でお互いへの想いを募らせるばかり。
果たして、すれ違う二人の運命やいかに!
愛の茨、第二回もお楽しみに!
* 式見蛍と式見傘が丁度見た回=「第23話 キミが居れば、それでいい」(後に、「愛の茨」史上最高の傑作と称される回)